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カラテ大戦争

真樹日佐夫先生は今年、2012年1月2日急性肺炎により急逝されました。

享年71歳。

作家としての顔、空手家としての顔を持ち、1970年代には極真会館本部の師範代でもあった。

この映画の原作は、「月刊少年マガジン」に連載されていた「空手戦争」原作は大山倍達と梶原一騎の共同原作。
(大山倍達が原作に関わっているということで本格的な空手劇画にしたかったと思われる)

「地上最強のカラテ」「地上最強のカラテPrt2」などと大ヒットとなった三協映画で今度は真樹日佐夫を
主役に映画を製作することとなった。(当時、真樹日佐夫は極真会館東京支部渋谷道場の支部長)
「地上最強の空手スター 真樹日佐夫」の誕生である。

【ストーリー】

極限流空手の大神達也(真樹日佐夫)は極限流の総帥である東坊徹源(大滝秀治)の娘、礼子(夏樹陽子)を助けるために覆面レスラーに重傷を負わせてしまう。
日本空手連合からは、極限流に対しての非難が浴びせられ大神は責任をとり極限流から去ることとなった。

その後、タクシー運転手として働いていた大神は偶然に礼子を客として拾い昔を思い出す。

その頃、日本空手連合の荒木会長(安倍徹)と政治家・相馬勇人(金子信雄)は極限流の東坊徹源に
香港、タイへ空手進出のための話を持ちかける。

東坊徹源は、極限流空手を世界に知らしめるため、礼子から頼まれていた大神達也の極限流への復帰を許す。
3年ぶりに極限流空手に復帰した大神達也は、道場生をなんなく倒すが、東坊徹源は
「昔のお前はもっと強かった、今のお前の技にはツヤがない!」と、道場を出て行く。

次の朝からは大神の激しいトレーニングが始まる。
自らの特訓で、かつての力を確信した大神は礼子の反対を押し切り香港へと渡っていく。

一方、日本の空手界の動きを探るためクラブの歌手として働く陳鈴蘭(白氷氷:パイ・ピンピン)
日本の空手が香港へ進出しようとする動きを掴み香港に手をまわす。

香港に渡った大神に次々とカンフーの使い手が襲いかかる。
カンフーには、白竜を最高位とし、赤竜、黒竜、青竜とランクがあるという。
最初に襲って来たのは最下位の青龍だった。

青竜、黒竜のカンフーを次々と倒していき、赤竜までも倒した大神。
大神の前に陳鈴蘭が現れ、「次は白竜と闘いなさい」と告げる。

香港市街を眺める岩山で白竜(陳耀林)と大神の死闘が始まった。
長く続く攻防の中、白竜の必殺の飛び蹴り。
大神は、間一髪それをかわし白竜の頭部へ足刀を決める。
倒れた白竜に「兄さん!」と駆け寄る陳鈴蘭。
「たった一人の兄をよくも!」
「今後しばらくは日本空手が香港を支配するかもしれない。でも、カンフーは滅びない!」
「きっと空手に勝ってみせるわ!」
陳鈴蘭の血の叫びを聞き、大神は傷めた体で山を降りるのだった。

タイ・バンコク ラジャダムナン・スタジアム。そこでムエンタイの試合を観戦する大神の姿があった。
そこへ日本への留学経験があるとタイの青年が大神に通訳を申し出る。
断りながらタイの街を歩く大神は、かつてミドル級でムエンタイ最強のボクサーであった
キング・コブラ(ダーム・ダサコーン)の落ちぶれた姿を見る。

プンサノンジム。制止する通訳のポーンの言うことを聞かず大神はムエンタイのチャンピオンが練習
するジムへと現れた。
「日本の極限流の空手家がチャンピオンと勝負したい!」
大神の言葉に最初は相手にしなかったボクサー達だが、大神の挑発にのったボクサーが倒される。
それを見たチャンピオンのチューチャイは大神とリング上で勝負することになる。
凄まじい気迫で大神にローキック、ハイキックを繰り出すチューチャイ。
それを防ぐ大神、大神の蹴りもチューチャイに防がれる。
激しい攻防の中、大神とチューチャイが飛ぶ!
一瞬の間際に大神の蹴りがチューチャイにヒットしチューチャイは倒れる。

日本では政治家・相馬勇人の事務所で相馬と東坊徹源の話し合いが行われていた。
香港でカンフーを倒し、タイではチャンピオンを倒した大神の功績について東坊は極限流の支部開設を
申し出る。
しかし、相馬は極限流の支部ではなく日本空手連合の看板を掲げると言う。
極限流を利用されたと悟った東坊は怒り相馬の事務所を出て行く。

東坊徹源から話を聞いた礼子は大神をタイから戻すように懇願するが、東坊徹源は大神がこれからも
タイで闘い極限流の名を広めてくれるだろうと礼子の願いに応じない。
礼子は大神の無駄な闘いを止めようとタイへと向かう。

タイでは大神に荒らされたジムの社長・プンサノンが殺し屋を雇い大神を襲撃させる。
拳銃で大神を狙う男、刀を持った男。群集も集まり皆、大神を殺せと騒ぐ。
その群集を掻き分け一人の男が騒ぎを止める。キング・コブラだった。
コブラが拳銃の男に「この日本人は俺が勝負して殺す」と話すが、拳銃の男は大神を撃とうとする。
コブラの蹴りで拳銃が飛ばされ、刀を持った男二人が大神に切りかかるが、大神とコブラに蹴られ
退散してしまう。
そして、対峙する大神とコブラ。
コブラは大神に対してデスマッチを申し込む。

大神の居場所を探して礼子が現れる。
闘うことを止めろという礼子に、自分自身が闘いたいのだと話す大神。
しかし礼子には納得できない。体を張って闘いを止めようとするが・・・

闘いの日、コブラが家から出ていくのを止めるためすがりつく情婦のプラティープ。それを振り切り
「俺は今日、ムエンタイの名誉のために闘いに行く。必ず勝って帰る」
そう言い残し、コブラは決戦の場へ向かう。

大神も淡々とした足取りでホテルを出る。部屋の窓から大神の後ろ姿を見つめ続ける礼子。

荒涼とした人気の全くない場所。
そこで大神とコブラの死闘が始まる。
両者とも実力が伯仲しながらの蹴りと突きの攻防。
ヘトヘトになりながらもお互いゆずらない。コブラの肘打ちに膝蹴り、大神が頭突きで応戦。
渾身の力で二人が飛び、蹴りと突きを交わす。
地面に落ちると二人は動かなくなる。仰向けになったまま両者に熱く照らされる太陽。
この後、二人は格闘者として二度と立つことが出来なかった。

【解説】
この映画、真樹日佐夫先生が演じてるのは確かなんですが、声は声優さんの吹き替えです。
最近はVシネマなどでも真樹先生が出演してるビデオを見ることができます。それらは吹き替えなしです。
実際はガラガラでドスが効いた声ですね。

昨年、日本文化功労者を受賞した大滝秀治さんの空手着姿が見れるのは、この映画だけでしょうねえ。

また、この映画のアクションは真剣勝負との振れこみ。
大神対覆面レスラーの格闘シーンでは真樹先生が語っています。
「日本でのクランクイン当初、すっかりあがってしまい人間嫌いに陥りかけたわたしを救ってくれたのは
スタッフ一同の心づかいである。---中略---
わたしがようやく燃えてきたのはプロレスラーとの格闘場面あたりであろうか。
このレスラーについては、アントニオ猪木氏を通じて、来日中の悪役覆面レスラー、ゴールデン・ファルコムを
特別出演ということでまわしてもらった。
ファルコムはカラテと聞くと、途端に闘志を剥き出しにし、「オーケー、カム・オン!」
リングそのままの憎たらしいジェスチャーで挑発しやがった。
(ようし、プロレスなにするものぞ!)
わたしも頭にすっかり血がのぼり、実戦そこのけの激しい攻防と相成った。
そばで、共演の夏樹陽子クンが本当にこわそうに震えていた。」

白氷氷が劇中で唄うのは「カンフーエレジー」。台湾の歌手ですね。
この白氷氷(パイ・ピンピン)はこの映画の後、梶原一騎の妻となるが台湾へと逃げるように帰ってしまう。
後に台湾で梶原一騎との間にできた娘を誘拐され凄惨な形で殺害されるという悲劇にも会う。
現在は、台湾の芸能界で今も元気に活躍されてるようです。

白竜役の陳耀林は前年に「ゴルゴ13 九竜の首」にも出演しています。
ブルース・リーが全盛の頃に陳が真剣勝負で勝ったという話もあるが?
どうなんでしょうかね?
真樹先生が本気で右ローキックを入れて、左足の腿が腫れあがり1週間足を引きずっていたとか。

キング・コブラ役のダーム・ダサコーンは元ミドル級のチャンピオンで真樹先生も撮影中において
ダサコーンの回し蹴りをアゴに受け危うく倒れそうになったらしいです。
しかし、体は絞まってないしこれもどうなんでしょうかね?

夏樹陽子は「空手バカ一代」でデビューし、今回もカラテ映画のヒロイン役です。

「カラテ大戦争」という題名から、もっと世界中を回っての対決かと思ってたら、
香港とタイの2ヶ国だけ。少し寂しい感じでした。
相手役のカンフー、タイボクサーにしても動きにキレが無く、今の時代なら
もっと動ける役者さんもいると思うのですが・・・
これはアクションでなく真剣勝負だからと自分に言い聞かせながら当時は観てました。

しかし、当時のタイでの空手映画の撮影はかなり根性要ったと思います。
最後、引き分けのように終わったのもタイでの撮影だったからでしょうか?

真樹先生は、後年多くのVシネマの製作に関わってきました。
役柄は空手の師匠役が多かったですね。本当の空手の師匠だからやりやすかったんでしょうか。
「ワル」「ボディガード牙」「新空手バカ一代」「実録 柳川組」「すてごろ」などなど。
見たことのない方、是非見て真樹ワールドを堪能してください。

真樹先生のご冥福をお祈りします。

参考図書:月刊現代カラテマガジン


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