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「ボディガード牙 必殺三角飛び」再び・・・
以前にも扱わせてもらった題材ですが、昨年ようやく全編を観ることができたので、
再度「ボディガード牙 必殺三角飛び」を御紹介。
「ボディガード牙 必殺三角飛び」
1973年10月公開
監督: 鷹森立一
企画: 太田浩児
原作: 梶原一騎・中城健
脚本: 中西隆三・鷹森立一
撮影: 山沢義一
美術: 藤田博
編集: 田中修
音楽: 津島利章
助監督:小平裕
挿入歌
「スキャンダル」
作詞: 阿久悠
作曲:中村泰士
編曲:高田弘
唄 :荒木ミミ
徹心会館の大東徹源(大山倍達)の元へ、鬼哭流空手の鮫谷一貫(石橋雅史)から果たし状が届く。
試合空手に不服を持ち、実戦にて挑むというものだった。
徹源は、牙直人(千葉真一)の妹、マキ(志穂美悦子)に牙直人の居場所を問うが、すでに牙は徹源の代わりに
鮫谷一貫と血蛇ヶ池で対峙していた。
「いかん!徹心会空手は決斗は許さん!止めろ!」
徹源の命で、マキは血蛇ヶ池に向かう。
ー血蛇ヶ池ー
激しい雷雨の中、牙と鮫谷が闘う。
そこへマキが現れたが、鮫谷の弟子達に襲われる。
応戦するマキだが、遂には捕えられ鮫谷一貫の目潰しを受けてしまう。
牙はマキを助けようと向かうが、鮫谷の弟子達に阻まれる。
怒る牙は弟子達を倒し、対する鮫谷に三角飛びで蹴りを放つ!
ー新聞報道ー
「空手界抗争遂に決闘事件へ」
「牙直人自首、弁護士を拒否」
「牙直人に実刑判決」
「窮地に立つ徹心会空手」
「牙直人自ら空手界を去る」
ー関東刑務所の作業場ー
数人の受刑者たちが一人の男、南条武(渡瀬恒彦)をスコップを振り回し襲っている。
対する南条もスコップで応戦。
それを見る牙。
スコップを落とした南条は、素手になり独特の構えをする。
それを興味深く見る牙。
そこへ南条の後方から攻撃が。その瞬間、牙が飛び出し男の助っ人に入る。
南条と牙は襲う受刑者達を蹴散らす。
作業の合間の昼食時間、牙には鰻重の差し入れがあり、南条に「食えよ」と差し出すが
南条は拒否。牙が聞く「お前、さっきの構えありゃ何流だ?」南条は「自己流だ」と。
牙「ありゃ、ウナギ流だな!」笑いながら鰻重を食べる二人。
牙の出所の時が来た。
車で迎える謎の女、ミカ(桑原幸子)。
刑務所への差し入れは、この女だった。
「今晩、ここへいらして。」
店のマッチ箱を牙に渡すミカ。
女と別れ、街を歩いていると、キャッチバーの女に誘い込まれる。
そこで沖縄の歌を唄う女、新垣麻里(水原麻記)と出会う。
バーから法外な値段を要求される牙だが、麻里が金を出し救われる。
牙は、ミカから行くように言われたクラブへ立ち寄る。
クラブのボーイに止められる牙だが、強引に入りビールを注文する。
ビールを飲もうとする牙の手を止める神部(安岡力也)。
それを振り切り店内には緊張が走るが何喰わぬ顔で牙はビールを飲む。
それを見ていた辰見(室田日出男)は子分たちに「叩き出せ!」と命令する。
牙を囲む辰見の子分たち。
そこへ赤松(深江章喜)が止めに入る。傍にはミカの姿が。
牙を店に呼び寄せたのは、赤松が自分のボディガードにさせるためだった。
辰見は、赤松が牙を雇うことに不満を感じ赤松と対立する。
辰見の用心棒、竜塚(郷英治)が分厚い電話帳を三本の貫手でブチ抜く。
牙の表情が変わる「鬼哭流か」
牙が倒した鮫谷一貫と同じ流派だった。
対峙する牙と竜塚。
しかし、辰見が止め「この話は唐崎に決着つけさせるぜ!」と赤松に告げて去っていく。
辰見が唐崎(戸浦六宏)の事務所を訪れ、赤松が牙をボディガードとして雇ったことを
告げ、今までの赤松に対する不満を唐崎にぶつける
しかし、唐崎は赤松と対立することを避けるよう辰見に言い聞かす。
唐崎、赤松、辰見の三人には、ある秘密があった。
三人のうち一人でも欠けると、その秘密が公になるのを唐崎は危惧していた。
マキの入院する病院へ牙が見舞いに訪れる。
鮫谷一貫の目潰しで失明の危機にあったが、完治することが知らされ牙は喜ぶ。
そして、入院費は大東徹源が支払ったとマキから聞き、牙の表情は複雑に。
そして、マキは入院中に方向を時計の時刻で感じとるように訓練していた。
牙はマキの入院する病院を後にし、以前入ったキャッチバーを訪れ麻里に立て替えてもらった
金を返して立ち去る。
麻里は、金が多すぎるの気づき牙を追いかける。
そこで牙は、麻里が沖縄から来たことを知る。
その離れた位置で、牙と麻里の二人を監視する竜塚。
赤松は唐崎の事務所で、辰見との仲を修復しようとする唐崎に反発する。
赤松は牙をボディガードにしたことで、唐崎と辰見を敵に回してもいいとまで言う。
麻里の勤めるキャッチバーへ辰見の子分が押しかけ、麻里を拉致。
抵抗する麻里だが辰見らに暴行されてしまう。
そこへ牙が現れるが、しかし時遅し。
麻里は、牙に「あんただって、あいつらと同じ仲間じゃないか!」と言い残し去っていく。
南条が関東刑務所から出所してきた。
南条は赤松の店を訪れ、そこで牙と再会する。
南条は、赤松、唐崎、辰見ら三人にあの時の分け前を要求する。
あの時、唐崎、赤松、辰見に加え韓国人のキムと南条の五人が現金輸送車を強奪。
しかし、唐崎ら三人はキムに南条殺害を仕向け、南条はキムを返り討ちにし殺して
しまったため、南条は刑務所に入ることとなった。
しかし、南条は唐崎ら三人については一切喋らなかった。
麻里がキャッチバーに顔を出したところ、麻里を訪ねて出所した男が来たと店の女から
聞く。南条だと察した麻里は、街に出て南条の後を追い、南条と再会する。
辰見の元へ南条が現れ、分け前を渡すことを渋る辰見に鎌で襲いかかるが、
辰見の子分、赤松、唐崎らが駆けつけ、南条は鎌を振り回し暴れる。
唐崎に刃が向けられたところで、牙が唐崎の前に立つ。
向き合う牙と南条。
南条は更にもう一丁の鎌を出し二丁鎌で牙に向かう。
二人は外に飛び出し、牙は南条の鎌を蹴り上げる。
鎌が宙に舞い線路の枕木に刺さる。
その鎌を拾い持ったのが麻里だった。
南条と麻里は、鎌を構えて牙に対峙する。
その時、辰見の子分が麻里の鎌を取り上げようとするが、牙が子分を打ちのめす。
牙は、子分を倒し南条と麻里に逃げろと言い南条と麻里を連れて、その場を離れる。
南条は、牙の手出しが気に入らない。
相互に殴り合う二人。
一発、二発、三発・・・
南条が構える姿を見て牙が吹き出す「ウナギ・・・」
笑いあう牙と南条、そして麻里も。
南条は、赤松、唐崎、辰見の三人をどうしても許せない。
牙は赤松ら三人の元へ行き、南条へ金を渡すように説得する。
それを渋々了承する三人だが・・・
南条は、牙が一人で赤松ら三人を片付けようとしていると思い込み、
麻里の制止を振り切り、歩いて行く。
そこへ辰見の子分達が、南条を埋め立て地へと誘い込む。
そこで南条は鎌で応戦するが、子分達に何度も刺されてしまう。
牙と麻里は、南条を探し回るが・・・
すでに南条の息は絶えていた。
悲しみと怒りで牙は赤松らの元へ歩く。
待ち受ける赤松、唐崎、辰見とその子分達。
牙は短刀を持つ子分どもを一人、二人、三人と次々倒していく。
そこへ麻里も鎌を武器として現れる。
一台の車が止まる。そこから降りたのはミカと子分に短刀を突き付けられたマキの姿。
牙の動きが止まる。
その時、ミカの情夫がミカを刺すが、子分の投げた短刀が情夫の胸に突き刺さる。
その混乱に乗じて、牙が更に子分を叩きのめし、麻里は辰見に向かって走る!
逃げる辰見、麻里の鎌が赤松を斬る!
唐崎を追う牙だが、その前に竜塚が立ちはだかる。
その一瞬、竜塚の目潰しが牙を襲い、牙は視界を奪われる。
両目から出血する牙。
その傍に居た唐崎が短刀を光らせ牙に向けられるが、その刹那マキが「5時!」と叫ぶ。
マキの声を聴き、牙は唐崎の短刀を蹴り上げ唐崎の頭部へ蹴りをブチ込む。
悶絶して倒れる唐崎。
麻里は辰見を追い込み、遂には辰見の胸に鎌を突き刺して絶命させる。
牙と竜塚が対峙する。
竜塚が一歩一歩と牙に近づく。
後ずさりする牙。
そこへマキが。「3時!」
牙は3時の方向へ飛び、竜塚の視界から消える!
更に牙は別の方角へ。
そして、牙の蹴りが竜塚の首筋に!
必殺三角飛び!
竜塚は悶絶。
牙に駆け寄るマキ。
麻里は、無言のまま牙を通り過ごし去って行く。
南条の遺骨を抱き、船に乗る麻里。
それを見守る牙とマキ。
マキ「兄さん、あの人好きだったのね。」
牙「バ、バカいえ!」
マキ「分かってるわ、兄さんの気持ち。」
牙「このお~!」
笑顔で船を見送る牙とマキだった。
ー終ー
【解説】
前作の「ボディガード牙」は、原作に近いストーリーになってましたが、今回は違ってますね。
牙直人が前作の非情でクールな牙直人じゃなく人間らしく描写されてるように感じました。
ラストの志穂美悦子との絡みは、東映じゃなく東宝の青春映画のような雰囲気で終わってます。
原作の「ボディガード牙」を知らない人のために。
当初の原作は現在「続・カラテ地獄変/ボディガード牙」で発売されている。
牙直人は、大東徹源が館長を務める徹心会館の高弟だったが、大東徹源は、徹心会館を世界に広める
ために「ゴッドハンド機関」というボディガード会社を設立。
大東徹源の命により牙直人が、ボディガードとして徹心会館の名の元にビジネスをすることになった。
あらゆる要人の警護をする中、様々な危機的な状況を打破していく。
しかし、牙直人の素性を知る人間が現れて、「カラテ地獄変」へと移行する。
「カラテ地獄変」では、牙直の生い立ちから始まる。
そして、「新・カラテ地獄変」は牙直人の師・大東徹源が主人公となり、徹心会空手を創始していった
経緯を描写している。
もう、本当にややこしい!
さて、今回の作品。
牙の妹役として志穂美悦子さんがデビューしてます。前作ではクレジットあるものの、前作でスタントしていた
志穂美悦子に梶原一騎が素晴らしいと入れ込み本作に登用したということです。
竜塚役の郷英治さんは、前作と同じくラストで闘ってます。この方の眼は本当に殺気感じられます。
冒頭の出演となった石橋雅史先生は、これを機にカラテ映画での悪役として頻繁に出演されました。
極真会館前身の大山道場時代から、強さには定評のあった方ですから迫力は当然です。
南条役の渡瀬恒彦さんについては、前回も書いたのですが、ケンカ最強伝説は今でもあるようです。
今では、温厚な役で「警視庁捜査一課9係」シリーズに出演されてますね。
本作では、鎌を扱うということは沖縄古武術の達人という設定ではなかったかと思います。
ラストでは多くの死者がでたのかと思いますが、麻里は旅立ち、牙は笑顔で。問題なし?
ストーリーは無茶苦茶ですが、でも一貫性のある内容だったと思います。
それは、愛と友情と正義。
これからの映画も、この三点を大切にしてほしいですね。