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1976年に公開された「必殺女拳士」これは1974年からの志穂美悦子主演「女必殺拳」シリーズとは
違っています。「女必殺拳」では、李紅竜でしたが、今回は父親の復讐を果たす「桧垣由美」を演じてます。
監督は小平裕。脚本は松田寛夫。

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【必殺女拳士】

1966年ニューヨーク。
度重なる凶悪犯罪により警官の被害者も増加していくため、
空手を警官の護身術として採用されることが決まった。

そこで対立する沖縄空手の実力者、桧垣一真(千葉真一)と有力市会議員を抱き込んで
ニューヨーク市警に圧力をかける東京剛武館の二階堂弘宣(天津敏)。
市警の沖崎警部(河合絃司)は、桧垣一真の実力、人間性を踏まえた上で幹部に強く説得
する。

どちらを採用するか判断に迷うニューヨーク市警に業を煮やした二階堂は一真に果し合いを
突きつける。

果し合いの場へ娘の由美を伴い現れる一真だが、果し合いを行うことを拒む。
しかし、執拗な二階堂の挑戦に一真は受けて立つことに。

二階堂を物ともしない一真、そこへ現れたのは二階堂の雇った殺し屋、白毛鬼(石橋雅史)と
李鉄根(大塚剛)、アントニオ(佐藤京一)の3人。

一真が3人と闘う中、二階堂の側近、犬飼(日尾孝司)が娘の由美を人質にしようとするが、
一真はそこへ飛び込み犬飼の足を蹴り砕く。
由美を抱きかかえたその時、一真の左眼に白毛鬼が放った手裏剣が刺さる!
苦しみながらも白毛鬼に目潰し!
両目を潰され狂い暴れる白毛鬼。
そこへアントニオの剣が一真の左肩を突き、更には李鉄根のサイが一真の右手を貫く。

倒れ込む一真。
「桧垣、命だけは助けてやる。そのかわりこのニューヨークから失せろ!」
二階堂が手下とともに去っていく。

一真は、由美に「奴らの顔を覚えとくんだぞ!」と言い聞かせる。

ロサンゼルス。

アパートの階段を買い物かごを持ち、うさぎ跳びで上がる由美。
力つきて転び助け起こそうとする住人。
そこへ「自分で立て!」と叱咤する一真。
「上がって来い!」一真の激が飛ぶ。
更にまた由美はうさぎ跳びで階段を上がる。

一真の厳しい空手の稽古が由美に課せられ、由美は成長していく。
鬼気迫る一真の稽古に由美は何度も倒れる。

ある日、由美の日記を一真は見つける。
「空手がにくい 空手なんか大っきらい!」
殴り書きされたその文を読み、一真は愕然とする。

いつものように一真と稽古する由美。
一真の厳しい稽古だが、一真の身体は病んでいた。
由美の手加減した突きに一真が叱りつける。
「俺を二階堂だと思え!」
そして、由美の飛び蹴りが一真の胸元へ・・・

病に伏せた一真は、今までの空手ばかりの生活について由美に詫びる。
しかし、一真の恨みだけでなく二階堂に殺された沖崎警部の事も話す。
今、二階堂はニューヨーク市警の師範という肩書を踏み台として東京で
剛武館の総長として君臨していることも。
一真は、もうそんな事はどうでもよいから、由美に葛飾の祖父を訪ねて
東京に帰り幸せに暮らせと告げ息を引き取る。

しかし、由美は必ず二階堂をこの手で倒すことを誓うのだった。

東京

由美は、スリをした孝太郎(佐藤蛾次郎)と出会う。

剛武館の道場で、五人掛けを行う総長の二階堂。
その中で他の門下生より一際腕の立つ「オキヤママサヒコ」と名乗る男。
二階堂は、その男の実力を認める。

稽古の終わった道場へ由美が現れ、二階堂と立ち合いたいと申し出る。
相手をしない道場生達。
どうしても立ち合いたいと言う由美に腹を立てる道場生の黒江。

それを見ていたオキヤマは由美の実力を一目で悟り、黒江に立ち会わない
ように諭すが、黒江は取り合わない。

由美に向かう黒江だが、由美の後ろ回し蹴り一閃で羽目板まで吹っ飛ばされ
てしまう。

勝負はついたと引き揚げようとする由美にオキヤマが名を聞く。

「檜垣由美」そう名乗ると由美は去って行った。

「檜垣・・・」何か思い出そうとするオキヤマ。

二階堂の部屋で、女一人に倒されたという道場生を叱責する犬飼。
そこでオキヤマから檜垣由美という名を聞かされる二階堂だが知らぬふりを決め込む。

龍泉寺の住職・覚禅(加藤嘉)の元へ孝太郎が由美を連れて来る。

一目で孫の由美と悟った覚禅。

由美の母親が眠る墓へ父・一真の遺骨も入れてもらい覚禅と拝む由美。

料亭で代議士の大場(小松方正)に世界空手道選手権での名貸を依頼する二階堂。
選挙での票をエサに大場と二階堂は手を組む。

覚禅とともに托鉢に歩く由美。
その道中、露天で稼ぐ孝太郎たちにヤクザが法外な値のショバ代を請求する。
孝太郎は、由美に助けを求めヤクザは由美により難なく倒されていく。

剛武館では、世界空手道選手権のポスターが貼られ、道中で由美もそれを見る。

剛武館の二階堂の部屋で世界空手道選手権への出場者名簿を見る二階堂と犬飼。
そこには桧垣由美の名が。
そして剛武館の強敵となる沖縄の知念二郎とキューバのゴンザレス、リビアのサッシンの名も。

二階堂は剛武館の強敵となる出場者を殺戮していき、優勝は剛武館とする策略だった。
リビアに向かう二階堂から雇われた殺し屋三人。
まずはサッシンを殺し、次にリビアでゴンザレスを殺す。

そして沖縄・那覇。

我が子を抱き妻と歩く知念二郎(千葉治朗)に襲いかかる白毛鬼。
更にアントニオ、李鉄根が襲う。
妻と子をかばおうとした知念の身体に李鉄根のサイとアントニオの剣が貫き
知念は倒されてしまう。

二階堂の部屋では、殺し屋三人に報酬が手渡されていた。

キャバレーで飲んだくれる剛武館の四天王と道場生。
殺し屋三人に倒された知念ら強豪が世界空手道選手権に出れなくなったことで
騒いでいる。
その中にはオキヤマの姿も。

その席で由美を片付けると報酬があると言う話が入ってくる。
オキヤマが乗り気で自分がやると言い、四天王連中も任せることにする。

托鉢に歩く由美の前にオキヤマが立ちはだかる。
由美に技を繰り出すオキヤマ。

由美も追い込まれるが、由美の飛び蹴りがオキヤマの首筋に決まる。

二階堂の部屋で正座するオキヤマ。
由美の実力を甘く見ていたと後悔する二階堂とその四天王たち。

策を練る二階堂。

由美は覚禅と座禅を組んでいた。
そこへ侵入する殺し屋三人。

更に現れたのはオキヤマだった。
オキヤマは偽名で、実は殺し屋達に殺された沖崎警部の息子、
沖崎政彦だった。

沖崎は父親の仇を探すために剛武館に潜入していたのだ。

李鉄根と戦う沖崎、そして由美はアントニオに立ち向かう。
由美を助けようと覚禅が向かうが、白毛鬼が一撃を与え覚禅は倒れる。

沖崎は李鉄根を倒し、由美の元へ向かうが由美はアントニオの剣で左腕を刺され
更に白毛鬼により剣で刺されようとしていた。
アントニオ、白毛鬼を沖崎が蹴ちらし何とか由美は助かる。

治療を受ける由美だが医師から腕が砕かれた骨はもうう一度折れたら腕は使われなく
なると告げられる。

しかし、由美は何としても二階堂が世界大会を成功させる前に勝負しなければと
考えていた。
その場に居た沖崎も納得する。

そこへ意識朦朧となっていた覚禅が由美を呼ぶ。
「親父の無念を晴らし二階堂に勝つのじゃ」と覚禅の言葉。
悲しみながらも決意を固める由美。

「強気は己を全うするわけでもなく、弱気が真に役立つことがある。
己の弱点は、これを武器として役立つ。
敵の長所は、これを短所と課して戦えばいかに不利な戦いでも
勝機は開きようというもの。」
覚禅の言葉が由美に聞こえる。

由美は沖崎との連名で二階堂に果たし状を送る。

決戦の場。

待ち構える剛武館の総長二階堂、四天王と弟子たち。

草むらに身を潜め機を狙う由美と沖崎。

そして二手に分かれ沖崎が走る。
それに気付いた道場生達が沖崎に向かうが、沖崎にことごとく倒される。

その騒ぎに気付いた二階堂は四天王を向かわせる。

由美は二階堂に向け近づいていくが、道場生に見つかり道場生達を倒す。
二階堂、犬飼、白毛鬼の三人が向かう。

道場生を、なぎ倒していく由美に犬飼のステッキが強襲するが、
由美はそれを受け犬飼を倒す。

次に迫るのは白毛鬼。
由美の父、一真が目を潰し盲目となった白毛鬼。

由美は用意していた鈴を何本も草に投げ白毛鬼の聴覚を乱す。

しかし、白毛鬼はそれを封じ剣で由美を襲う。

ヌンチャクで対抗する由美。

由美のヌンチャクが白毛鬼の剣を絡め飛ばす!
その剣を由美が取り、白毛鬼を斬る!
倒れる白毛鬼。

そして現れる二階堂。
由美の空手着に「一真」の刺繍があるのを見つけるが、不敵に笑う。
「右腕一本で俺に勝てると思うのか!」
二階堂の蹴りが由美を強襲する。

一方、沖崎は四天王と対決し4人をなぎ倒し、更にアントニオも倒す。

由美と二階堂は互いに攻防を繰り返し睨み合う。

そこへ風が吹く。
二階堂の手刀が由美の骨折した左腕を襲う!
その時、由美の左腕を吊っていた三角巾が風で舞い二階堂の顔を覆う。
左腕の激痛に耐えながら由美はその隙を逃さず飛び蹴り!

由美の足刀が二階堂の顎を砕き、二階堂は吹っ飛ぶ。
更にとどめの正拳を二階堂の腹に!

血を吐き悶絶する二階堂。

由美の闘いは終わった・・・
悲願であった父の仇、そして祖父の仇を倒した。
沖崎も同じ思いである。
しかし、二人の表情は厳しく辛い。

夕日が二人を赤く染めていく・・・

ー終ー

【解説】

さて、カラテ映画での復讐劇は定番ではありますが、この映画はその意味で本当に復讐、仇討の要素
タップリでした。最近の映画では、こういう復讐劇は受け入れられないかなとも思いますが、私個人
の意見としては大好きですね。
勧善懲悪は、アクション映画の原点であると思います。

ま、現実では素手であっても人を殺傷すれば即、殺人罪、過失致死罪、傷害罪とかになり逮捕されてしまいます。
そこを無視してストーリーを展開するのが面白くさせるのです。
まさに時代劇の要素ですね。

ここで、警察の捜査を絡めると話が複雑になり悦ちゃんのアクションも、倉田保昭のアクションも減り
ミステリードラマになりかねないですからね。

さて、出演されてる俳優さんですが佐藤蛾次郎さんが出演してるのは驚きでした。
「男はつらいよ」シリーズで葛飾柴又の寺男源吉として出演してた時期ですから、
その頃に同じ葛飾での役柄に似た風貌での出演です。

まあ、それから10年後は悦ちゃんも「男はつらいよ」に出演するのですが・・・
それが悦ちゃんの人生を左右させることとなるとは・・・
(これ以上は語りたくないので、ネットで検索してください。)

祖父役の加藤嘉さんは名優で数多くの映画、テレビに出演されており御存知の方も多いかと思います。
この映画では、由美の闘う前の言葉が渋いですね。

石橋雅史先生ですが、今回はなぜかセリフが殆ど無く吠えたり絶叫したりでした。
大塚剛さんも、殺し屋に徹していてセリフも少し。
ちょっとそれが寂しかったです。

そして今回悪役で最強の天津敏さん。
残念ながら、この映画の3年後に亡くなられています。
(1921年2月16日 – 1979年7月24日)
戦時中は海軍で少年水兵の教官をされていたらしいです。
「隠密剣士」の甲賀竜四郎
「仮面の忍者 赤影」の 甲賀幻妖斉
「水戸黄門」「必殺」シリーズにも多く出演。
その風貌からか、悪役として最適だったようですが、実際は本当に優しい人柄だったそうです。

色々な役者さん、スタッフが頑張って製作したこの映画、是非皆さんにもう一度観てもらいたい
なと思います。

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