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映画「空手バカ一代」後篇
「空手バカ一代」
藤田修造、グレート山下と別れた倍達は、沖縄の街で少年達にバッグを
奪われてしまう。
そんな中、ヤクザに雇われるホステスの麗子(夏樹陽子)と出会う。
酒に溺れ、自分自身を見失い自殺しようとしていた麗子を倍達が止める。
麗子に邪魔者扱いされた倍達は、その後バッグを奪った少年を見つけ、少年達が住むバラックに追いつく。
少年達は孤児の集まりで、生きて行くために盗みを働いていたのだ。
倍達と少年達の生活が始まる。倍達に次第に惹かれていく少年達。
盗みをさせまいと、倍達は瓦割り、ハンマーで拳を叩かせるなどの見世物を行う。
そこへ藤田とグレート山下が突然声をかける。
アメリカ遠征を考えているという二人に倍達は共感する。
ある日、倍達は少年達の一人、カズオ(高橋仁)の姉が麗子だと知る。
倍達は麗子にカズオに会ってくれと頼むが、麗子は拒み
そして倍達の前で吐血してしまう。
麗子を介抱し医師に診察させるが、医師は入院を勧める。
麗子は重度の結核を患っていた。
しかし、金は無い。
倍達は、プロレスを仕切るヤクザ達のボス、劉鳳厳(内田朝雄)の元へグレートと藤田
とともに訪れて前金を受け取りプロレスの八百長試合を行うことになる。
試合は秘密闘技場で行われた。
覆面レスラーの攻撃に耐える倍達だが、凶器を使う攻撃に思わず目潰しをして覆面レスラーを
倒してしまう。
顔色を変えるヤクザ達。
咄嗟に藤田が会場の電源を落とし、倍達、グレートの三人で逃げる。
その中、ヤクザの銃弾がグレートに撃ち込まれる。
倍達を探すヤクザは、病に伏せる麗子の部屋に行き倍達の行先を問いただす。
そして麗子を痛めつけ、廃棄場へ捨てる。
銃弾を受けたグレートを介抱する倍達と藤田。
そこへ居場所を突き止めたヤクザ達がカズオを連れて銃を構える。
なすすべのない倍達と藤田。
グレートは隠し持っていた銃でヤクザを撃つが、ヤクザの銃弾により倒れる。
倍達はヤクザのライフルを奪い、乱射してヤクザ達を散らす。
グレートを支える藤田の腕の中でグレートは息を引き取る。
そして、そこで泣くカズオに麗子が危篤だと知らされバラックに駆けつける倍達。
そこで麗子も息を引き取る。
倍達は、麗子から聞かされていたカズオとの思い出の地、新原(みいばる)の海岸
へ麗子の遺体を埋める。
倍達は空手着にコートを纏い劉鳳厳のアジトへ一人で向かう。
しかし、一人ではなかった、藤田も同じく柔道着にコートを纏い待っていた。
藤田とともに、劉鳳厳のアジトへ向かう倍達。
まずはアジト前の衛兵を倍達の拳と蹴り、藤田の絞め技で倒す。
更に多数の衛兵が倍達と藤田を囲む。
唸る藤田の柔道殺法。
倍達は先にアジトへ侵入する。
そこへ待っていたかのように現れる劉鳳厳とヤクザ、衛兵。
衛兵達をなぎ倒す倍達と藤田。
そこへ突如現れたのは与那島。
与那島は、倍達に道場破りされ復讐心に燃え腕を磨いていた。
海岸で対峙する倍達と与那島。
与那島の突き、蹴りが倍達を襲う。
応戦する倍達。
明らかに腕を磨いている与那島の攻撃に苦戦する倍達だが、
胴回し回転蹴りが与那島に飛ぶ。
更に倍達の正拳が与那島の膝を砕く!
フラフラとなり、よろける与那島は自ら海中へ転落してしまう。
更に劉鳳厳を追う倍達、しかし劉鳳厳は鏡の間へ姿を隠す。
手裏剣を構え鏡に見え隠れする劉鳳厳。
そして倍達の腹部に劉鳳厳の手裏剣が襲うが、倍達の正拳が劉鳳厳の顔面を捉え
劉鳳厳は鏡を突き破り絶命する。
海岸に立ち息吹を行う倍達。
その後ろ姿を藤田が見つめる。
「我が道、極真に終わり無し!」
ー完ー
【解説】
今回、一本の映画を前篇、後篇と分けてしまいまして申し訳ありません。
さてさて、原作「空手バカ一代」
これはもう、当時の私達にとっては聖書のようなものでした。
孤高の空手家、大山倍達が苦悩しながらも自ら信じる空手を研鑽していく物語です。
あらかじめ、お話しておきます。
この映画と原作は登場人物の名前が、かなり違います。
映画:大山倍達=原作:同じ
映画:藤田修三=原作:遠藤幸吉
映画:グレート山下=原作:グレート東郷
映画:与那島=原作:同じ
映画:トッド若松=原作:同じ
どういうことかというと、原作での実在人物は大山倍達以外は名前変えてます。
これは、アニメでも同様でしたね。
この映画の冒頭に倍達が道場破りを行うシーンがあります。
これは、原作「空手バカ一代」を知らない人が観たら、どんだけ大山倍達は酷い奴だと思われる内容ですね。
しかし、これに至る話が原作にあります。
与那島六段が大山倍達についてマスコミに邪道、ウソつきよばわりしたため、倍達は怒り
ウマ殺しと名乗る与那島の道場に乗り込みます。
そこからの経緯を映画では省略してます。
まあ、当時は殆どの映画観た人は「空手バカ一代」を読んでるとは思いますが。
それからの百人組手、「鬼殺し油地獄」の描写は凄くいい出来だったと思います。
その後何故か?ヤクザの用心棒を続けてる・・・
前回の「けんか空手 極真無頼拳」でも似たような感じはありましたが、大山先生ブレすぎ・・
まあ、これは映画での話ですからしょうがないんですがね。
その後、映画では沖縄に行くのですが、ちょっと製作費を削ったかなと。
原作では、倍達と遠藤幸吉(映画では、藤田)がアメリカへ行きプロレスラーと闘う内容でした。
プロレスラーの力に驚く倍達が、苦戦しながらもプロレスラーを倒す描写はまあまあという感じでした。
しかし、これから後が全くの原作無視。
映画の題名が「空手バカ一代」であるのなら、少しは原作に忠実になって欲しかった。
沖縄で少年達と麗子に関わる内容は、今まで観てきた「少林寺拳法」にも似ていて、あ~またか・・・
と思わせる内容。
劉鳳厳をボスとするヤクザとの闘い。
最悪なのは、「燃えよドラゴン」を明らかにパクッたであろう鏡の間での闘い。
当時観ていた私も、ここでテンション下がりまくりでした。
監督は「極真拳」「女必殺拳」シリーズを手掛けた山口和彦監督。
ここはもう少し手をかけて欲しかったですね。
多分、当時は映画の製作量がかなり多かったので、一本の作品にだけ突き詰めた内容に
はできなかったのかもしれません。
この映画でデビューしたのが夏樹陽子さんです。
後年真樹先生が主演の「カラテ大戦争」にもヒロインとして出演してました。
この映画では、グレート山下と出てましたが、実際にはグレート東郷です。
この、グレート東郷が面白い。
168㎝、104㎏
戦後、アメリカのリングでヒール(悪役)として生きて行く。
何度も試合で血を流し
「血笑鬼」そう呼ばれていた。
意味のないお辞儀、それが日本人と思わせるように。
そして反則を行い、最後はアメリカ人レスラーに負ける。
しかし、これが東郷のアメリカでのビジネスとなる。
守銭奴という噂は、レスラーの間では常識だった。
しかし、あの力道山がグレート東郷に対しては尊敬の念を示していたという。
しかし、グレート東郷は本当に日本人であったのか?
実は、東郷の母親は中国系であったと。
朝鮮半島出身の力道山が、なぜ東郷をサン付けで呼んだのか?
同じような境遇の先輩である東郷であるからか・・・
その後、東郷はプロモーターとなり日本でも荒稼ぎするようになる。
ロサンゼルスに豪邸を建て暮らしも優雅に。
しかし、1963年、力道山が死去し、東郷は日本との関係が断たれてしまう。
東郷について、悪い噂も多いが、良く言う人もいる。
「仕事に対する当然の対価を要求していた。」
良いも悪いもウソではないであろう。
しかし、東郷が日本とのプロレスビジネスから離れてからは日本に来る
外国人選手の質が明らかに下がったという。
東郷は、1973年ロサンゼルスで、胃ガンのため他界。62歳だった。
その後、大山倍達の著書では、グレート東郷は韓国人であったと明かされた。
参照
森達也「愛しの悪役レスラーたち」
戦後、日本は力道山のプロレスに湧き、空手では大山倍達がその後、日本の若者達の
心を捉えていく。
戦後の日本を奮い立たせたのは朝鮮半島出身者だったのか?
日本人になろうとした朝鮮人が、日本人らしくあろうとしていたのではないか?
当時、日本人より更に強い日本人となるために闘っていたのが大山倍達であり、力道山。
そして日本人としてグレートになろうとした東郷なのか。
話が、ちょっと逸れましたが映画「空手バカ一代」
是非とも観てみてください。